137:
ウチの職場で障者が働き出した。今流行のアホルガーって奴。ここではAとしとく。こっちから話し掛ければ答えるけど向こうからは一切話し掛けてこない。時折ぼーっと立ち尽くしてたり、と割りとおとなしい感じ。仕事に関する話もこっちの指示には応えるけど疑問があっても声を掛けてこない。理由を聞くと「話し掛けていいものか分からなかったので」と返事。空気読めないって言われるのはこういう所なのかと納得しつつ、普通に仕事はしてた。ただ、やっぱり障者ってことで色眼鏡で見る人間もいるんだよね。何かにつけて突っ掛かっては文句言う若いのが一人いた。仮にHとしとく。後で聞いた話だがHはAに色々と理不尽な命令を出しては断られるということを繰り返していたそうだ。断った理由は「彼には命令権限が無いから」と実に論理的だったがHとしては「障者のくせに」と恨みを募らせていたらしい。
138:
ぶっちゃけ勤務ってのは工場なんだが、彼は新人なのと専業を任されてることから、その班の区域内で一人で作業してることも多い。そんなある日に事件が起こった。俺が知らせを聞いて駆けつけてきて見たのは地面に倒れてるAと仲間に取り押さえられているHの姿。聞いた所によると、いつものように嫌がらせを繰り返していたHが、堪えないAに痺れを切らせて飛び蹴りかましたらしい。無防備な脇腹を蹴られたAは吹っ飛んでそのまま倒れたのが今のその姿。助け起こそうとすると、こちらに手で「構うな」という感じで断ってきて一人で立ち上がった。(これも後聞きになるが触覚過敏とやらで他人に触られるとある種の拒否反応が働くそうだ。)A「あーすみませんが、何かしましたかね、俺?」と興冷めやらぬHに静かに問い掛けるA。H「お前が居るだけで気持ち悪いんだよ!」と喚くH。助け舟を出すべきかと俺が口を開こうとした時、Aが困ったように頭を掻きながら口を開いた。
139:
A「あー、何っていうか、呼び名がよくわからないのでちょっとこっちで付けます。」突然何を言い出すかと思ったんだがどうやらHの名前のことらしい。A「えーと『あご毛』と『ひげモザイク』とどっちがいいですか?」思いもよらぬ言葉にギャラリーの7割が吹いた。Hの容姿は背の高い細身であごヒゲを伸ばしているのが特徴的な風貌。作業服と作業帽は皆が統一して着用しているので確かにヒゲは目立つだろう。
クスクス笑いが響く中、怒り心頭のH。H「おまっ!ふざけんな!」A「ああすみません。女性もいる場で毛はハラですね。『あごモザイク』にします。」あくまでもマイペースなAが完全にこの場をリードしていた。A「えーところで、あごモザイクさん。これは明らかに暴行だと思うので警察呼んでいいですか?」警察という言葉に、今さらながら焦ったのか声が小さくなるH。H「えっい、いや、警察呼ぶほどのことじゃ無いんじゃないかな」としどろもどろ。
クスクス笑いが響く中、怒り心頭のH。H「おまっ!ふざけんな!」A「ああすみません。女性もいる場で毛はハラですね。『あごモザイク』にします。」あくまでもマイペースなAが完全にこの場をリードしていた。A「えーところで、あごモザイクさん。これは明らかに暴行だと思うので警察呼んでいいですか?」警察という言葉に、今さらながら焦ったのか声が小さくなるH。H「えっい、いや、警察呼ぶほどのことじゃ無いんじゃないかな」としどろもどろ。